鼻にチリ紙
俺はいつも通り鼻水が止まらず困っていた。 夜寝ていても鼻水が出て、鼻をかむために起きなければならないから寝不足になってしまう。 うーん、どうしよう。そうだ。チリ紙を丸めて鼻に詰めて寝よう。我ながらいい考えだ。 俺はさっそく鼻にチリ紙を詰めて眠った。うむ。これで鼻水に悩まされずに眠れる。
翌朝、俺はすがすがしい朝を迎えた。よく寝た。鼻に詰めてたはずのチリ紙が見当たらないが、 寝てる間にどこかに落ちてしまったのだろうか。少々気になる。そして間もなく、 俺は鼻の奥から違和感を感じた。何かいる。何だろう。俺は気になって鏡で鼻の穴の奥を覗いてみた。 すると中には白い物体が。ぎゃ。鼻に詰めてたチリ紙だ。どうりで見当たらないと思った。
チリ紙は信じられないほど奥まで入り込んでいて、とても指では取り出せない。 鼻息で頑張っても、到底力不足である。くしゃみでも駄目だ。お手上げである。 こりゃあ病院へ行かないと取れないだろうか?俺はこんなことで病院に行くのだろうか? 必死でチリ紙を出そうとするが、どうしても出てこない。 兄貴は俺の苦しんでいる様を見て爆笑していた。

なんて薄情な野郎だ。絶望にさらされた俺は、
「鼻の奥にチリ紙が入ってなかったときの俺って、なんて幸せだったんだろう。 俺はあんなに幸せだったのに何が不満だったんだろう。」
と思っていた。
本気で病院に行く支度をしていたそのとき、かなりのくしゃみが出そうになった。 俺は、くしゃみの全エネルギーを鼻から放出した。すると、出た!やっと出た! 俺はあまりのうれしさにガッツポーズをとっていた。それほどうれしかったのだ。 涙だって出ていた。涙は鼻を刺激されたせいだけど。
俺はその日1日くしゃみが止まらず寝込んでいた。だが、ちっとも辛くはなかった。 なにしろ鼻の穴に何も入っていないのだから。 でも次の日になるともうそんな気分は忘れてしまっていた。 昨日の俺はなんてアホだったんだろう。鼻にチリ紙が詰まるなんて。
要するに、鼻の奥にチリ紙が詰まってしまった人の気分は、 現在鼻の奥にチリ紙が詰まってしまっている人にしか理解できないのだ。 チリ紙が詰まっていなければ、自分だってばかにしてしまうのだ。

最近のコメント